解雇 補足
1.労基法第89条第3号に定める「退職に関する事項」は、就業規則の絶対的必要記載事項ですから、就業規則に必ず規定しなければなりません。
2.労基法第89条には、就業規則に規定する解雇の事由について特段の制限はありません。しかし、契約法第16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。
また、労基法をはじめ様々な法律で解雇が禁止される場合が定められています。就業規則に解雇の事由を定めるに当たっては、これらの法律の規定に抵触しないようにしなければなりません。
※ 解雇が禁止されている場合
① 労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労基法第3条)。
② 労働者の性別を理由とする解雇(均等法第6条)。
③ 労働者の業務上の負傷、疾病による休業期間とその後30日間及び産前産後の休業の期間(産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内又は産後8週間以内の女性が休業する期間)とその後30日間の解雇(労基法第19条)。
④ 労働者が労働基準監督機関に申告したことを理由とする解雇(労基法第104条、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第97条)。
⑤ 女性労働者が婚姻したこと、妊娠・出産したこと等を理由とする解雇(均等法第9条第2項、第3項)。また、女性労働者の妊娠中又は産後1年以内になされた解雇は、事業主が妊娠等を理由とする解雇でないことを証明しない限り無効とされています(均等法第9条第4項)。
⑥ 労働者が、個別労働関係紛争に関し、都道府県労働局長にその解決の援助を求めたことを理由とする解雇(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)第4条)。
⑦ 労働者が、均等法、育児・介護休業法及びパートタイム労働法に係る個別労働紛争に関し、都道府県労働局長に、その解決の援助を求めたり、調停の申請をしたことを理由とする解雇(均等法第17条第2項、第18条第2項、育児・介護休業法第52条の4第2項、第52条の5第2項、パートタイム労働法第24条第2項、第25条第2項)。
⑧ 労働者が育児・介護休業等の申出をしたこと、又は育児・介護休業等をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法第10条、第16条、第16条の4、第16条の7、第16条の9、第18条の2、第20条の2、第23条の2)。
⑨ 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又はこれを結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由とする解雇(労働組合法(昭和24年法律第174号)第7条)
⑩ 公益通報をしたことを理由とする解雇(公益通報者保護法(平成16年法律第122号)第3条) 等
なお、③については、業務上の事由による負傷、疾病の労働者が療養開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合(又はその日以降、同年金を受けることになった場合)又は天災事変その他やむを得ない事由によって事業の継続が不可能となったときで事前に労働基準監督署長の認定を受けた場合は、解雇の制限がありません。
3.労働者を解雇するときは、原則として少なくとも30日前に予告するか、又は平均賃
金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要です(労基法第20条第1項)。
ただし、
① 日々雇入れられる者(1ヶ月を超えた者を除く。)
② 2か月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えた者を除く。)
③ 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えた者を除く。)
④ 試の使用期間中の者(14日を超えた者を除く。)
には予告する必要はありません。
また、下記の(イ)又は(ロ)の場合であって、所轄労働基準監督署長の認定を受けたときも解雇の予告は必要ありません。
(イ)天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能となるとき
例:火災による焼失、地震による倒壊など
(ロ)労働者の責に帰すべき事由によって解雇するとき
例:横領・傷害、2週間以上の無断欠勤など
また、解雇予告の日数は平均賃金を支払った日数だけ短縮することができます(労基
法第20条第2項)。
4.使用者は、労働者を解雇するに際し、解雇された労働者から解雇の理由を記載した証明書の交付を請求された場合、遅滞なく当該理由を記載した証明書の交付をしなければなりません(労基法第22条第1項)。
また、解雇予告の日から当該解雇による退職の日までに、解雇を予告された労働者から解雇の理由を記載した証明書の交付を請求された場合は、遅滞なく、当該理由を記載した証明書の交付をしなければなりません(労基法第22条第2項)。
5.期間の定めのある労働契約(有期労働契約)で働く労働者について、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないとされています(労働契約法第17条第1項)。期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。
また、有期労働契約が3回以上更新されている場合や1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、契約を更新しない場合、使用者は少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません(あらかじめその契約を更新しない旨が明示されている場合を除きます)(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第1条(平成15年厚生労働省告示第357号))。
さらに、使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第2条)。明示すべき「雇止めの理由」は、契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です。下記の例を参考にしてください。
・ 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
・ 契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約はその上限に係るものであるため
・ 担当していた業務が終了・中止したため
・ 事業縮小のため
・ 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
・ 職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたことなど勤務不良のため
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